感染対策に関するQ&A

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MRSAについて

Q1 寝たきり高齢者が多いため、発熱はなくとも常時ゴロ音あり、喀痰吸引が頻回に必要で、こういった場合に喀痰や便からMRSAが検出されても、MRSAによる感染症なのか単なる保菌状態なのか判断できません。
MRSA排菌者は原則隔離していますが、病棟の稼働に悪影響があります。状況に応じての対応では現場に混乱が生じるので、何か明確な基準はないでしょうか?

A1 寝たきり高齢者の多い病院または施設では、侵襲的な医療行為はまれにしか行われず、抗菌薬の使用も限られているため、MRSAが身体に付着したとしても、定着にとどまることが多く、感染症を発症するリスクは低いと考えます。MRSA対策は、「エビデンスに基づいた感染制御第3集―展開編」の書誌に、手洗いを第一とし、MRSA保菌者の個室隔離はしない、と記載がある一方で、「可能であればMRSA保菌者をハイリスク患者と同室にしない」「MRSA患者で膿汁の多い褥瘡患者、喀痰の多い気管切開患者など排出菌量が多い場合は周囲を汚染する可能性があり、施設で可能な隔離対策を行う」「これらの患者診療、看護・介護時は(病院と同じような)接触感染予防を行う」とあり、明確な基準がないことを示しています。CDCガイドラインにおいても、明確な隔離基準は示されていません。以上のことから、個室隔離や手袋以上のバリアプリコーションの実施は、MRSAが飛散する可能性が多いときに限ってよいと考えます。
各施設・医療機関においては、具体的に患者の伝播リスクを評価する必要があります。寝たきりで便からMRSAが検出され下痢症状がある患者や、喀痰の量が多く頻回に吸引が必要な患者では環境周囲なども汚染されやすく伝播リスクが高くなります。具体的には、自施設の状況に応じたリスクアセスメント表を作成しておくのもよい方法と思われます。周囲環境を汚染する危険があるケースとして、喀痰が多量、咳が頻回、吸引が頻回、下痢が頻回といった症例にチェックが入った場合は原則個室とするといった基準を設けるも良いと考えます。

例) 伝播リスクの基準として、①患者のADLの程度、②感染予防策の協力が得られるか③処置やケアの必要度、④排菌部位からの検出状況(下痢・排膿・喀痰が多いなど)から伝播リスクを検討し、個室配置の必要性があるかを判断。

患者の個室配置が難しい場合もあると思われます。
「隔離予防のためのCDCガイドライン2007:医療現場における感染性微生物の伝播予防」では個室隔離ができない場合の接触予防策について、患者のベッドの間隔を1m空けてカーテンで遮断することが推奨されています。この方法で多床室を利用するとしても、他の患者の選定が必要で、免疫不全患者、創部がある患者などは同室にしないことを要件として設けることも必要です。また、スタッフが耐性菌患者であることの共通認識できるよう、個人防護具や手指衛生が必要であるといった掲示(患者へのプライバシー配慮も必要)とPPEの設置を行い、多床室での運用を考えてみてはいかがかと思います。

*補足)
MRSAの隔離基準フローチャートやリスク基準のチェック表を用いて現場のスタッフにも理解しやすく工夫されている病院もあります。

Q2 MRSA患者は、週1回喀痰や便培養検査を行い、3週間連続して陰性を確認し、MRSA解除としています。しかし、なかなか3週連続陰性となることはありません。やはり病棟の稼働に悪影響があります。よい運用方法はないでしょうか?

A2MRSA定着は消えることが少なく、患者の状態により、いつ増菌してもおかしくないため、3週間連続検査陰性で完全に陰性との判断が困難です。一度MRSAが検出された場合には、保菌しているという考えのもとで感染対策を行っていく必要があります。3回連続陰性であっても、再検出した症例もあります。
やはりA1の考え方を参考にし、ADLが自立して周囲を汚染する可能性が低いのであれば、大部屋対応でも可能であると考えます。しかしADLの全面介助が必要な患者さんには接触予防策の継続が必要と考えます。

Q3 MRSAが複数の患者で検出された時には、同一株か調べていますか?また、どんな方法が一般的ですか?

A3 パルスフィールドゲル電気 泳動.(PFGE)によるゲノムDNA型別が信頼性の高い方法です。他、PCR型別、POT法などがありますが、検査が可能な施設へ検査を依頼することが必要となります。(外注)パルスフィールド電気泳動解析を実施も可能です。
感受性のパターンを先ず、確認するのが簡易な方法です。しかし同一株か否かを推定することは出来ても確定するのは困難です。

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