感染対策に関するQ&A

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疥癬について

1. 疥癬の感染経路

  • 肌と肌の直接接触が主たる感染経路。
  • 感染後約1~2ヵ月(高齢者では数か月のことあり)の無症状の潜伏期間を置いて皮疹などの臨床症状が現れる。
  • 潜伏期間に他の人への感染を明記した文献はない。

2. 通常疥癬と角化型疥癬

1)通常疥癬

1人の患者の規制するヒゼンダニの数は少ない。
宿主から離れたヒゼンダニは時間とともに感染力が低下する。
通常疥癬患者から感染成立する状況・・・濃密な接触の場合に限られる。

  • 一緒に寝る
  • 患者が使用した寝具を使用する
  • 長時間手をつなぐ  など

短時間の接触や衣類・リネンなどの媒介物を介して感染することは少ないと考えられる。

2)角化型疥癬

多数のヒゼンダニが患者の皮膚角質層内に存在する。
直接的な接触のほか、はがれた角質層が飛散・付着することにより、刃だと肌の直接接触を介さずに感染が成立することがある。
見舞客などの短時間の接触や、直接接触無にリネンなどの間接的接触を介して感染拡大し、集団感染を起こすことがある。

3. 疥癬の診断

  • 臨床症状

  • 顕微鏡検査やダーモスコピー検査などでのヒゼンダニ検出

  • 疥癬患者との接触機会を含めた疫学的流行状況の3項目を勘案して診断する。

4. 感染対策

  • 集団内に数か月間で2人以上の疥癬患者が見つかった場合は、角化型疥癬を感染源とした集団発生を考え、角化型疥癬患者の発見に努める。

  • 特殊な状況を除いて、集団発生の感染源は角化型疥癬である。しかし、疫学調査を行っても、感染源を特定できない場合が多々ある。
    角化型疥癬患者は全身状態が悪い場合が多いので、診断される前に死亡・転院などにより集団を離れて集団発生が認知される頃にはいなくなっている可能性がある。

詳しい感染対策については疥癬診療ガイドライン第3版の22ページを参照

Q1 疥癬患者が大部屋にいる場合、同室患者への対策はどこまで行いますか?

A1 疥癬患者が通常疥癬か角化型疥癬かで対策が変わってきます。問い合わせでは、どちらか不明なので、通常疥癬では、寝具やリネン類・環境などを介した間接接触による感染はほとんどなく、標準予防策を遵守。角化型疥癬の場合は、感染力が非常に強いため個室隔離し、標準予防策に加えて接触予防策を追加し、手袋、ガウンが必須です。
しかし通常診療中に皮膚科専門医が不在であれば鑑別が困難な場合も多く、「顕微鏡検査やダーモスコピー検査が陰性であっても、臨床症状・疫学的流行状況から疥癬を否定できないときは再度間隔を置いて、顕微鏡検査などを実施する」とガイドラインには記載されています。また、ダニの検出率は10~60%との報告もあります。
通常疥癬の場合は、可能であれば個室へ移動してもよいかと思われますが、個室が難しい場合にはカーテン隔離の対応でよいかと思われます。患者が大部屋に在室中の場合、手袋は必須ではないとしても、一人の患者を対応した後には必ず手洗いが必要です。手袋を使用した後には、患者毎に、必ず手袋を破棄・交換し、その後には手指衛生を施行することといった標準予防策の徹底が必要です。通常疥癬は、集団感染の危険は少ないといわれていますが、長時間の皮膚と皮膚の接触によって感染する可能性があります。身体介助やリハビリなど長時間皮膚との接触がある場合には接触感染対策を行う必要があり、同室者も皮膚と皮膚の接触などが無いよう注意が必要です。
角化型疥癬の患者診断された場合、同室患者の具体的対応としては、箸やコップなどの食器、お茶などの食べ物を引き出しにしまっていただいてから、いったん病室を出ていただきます。その後、ピレスロイド系殺虫剤を散布し、時間をおいて、落屑を残さないように拭き取り清掃をします。特にベッドの縁など落屑が溜まりやすい場所は丁寧におこないます。十分換気をした後で、同室患者には部屋へ返っていただきます。
また同室患者など潜伏期にある無症状の人に対する予防治療について一定の基準はありませんが、角化型疥癬で集団発生があった場合や一室に集まって行事を行うことがある療養病床では、リスクに応じて検討されてもよいかと思います。疥癬患者に対しては感染対策を実施しますが、同室患者で疥癬の徴候のない患者については標準予防策のみで良いと思います。
また、質問にあります「同室者に皮疹がある場合」は、市中の外注検査は確実に疥癬を検出できるとは限りませんので原因不明の皮疹で関連が疑わしければ、疥癬の可能性を考え、個室管理、接触感染対策を考慮しながら再度検査をすすめていく必要があります。
吸引が必要な患者では環境周囲なども汚染されやすく伝播リスクが高くなります。具体的には、自施設の状況に応じたリスクアセスメント表を作成しておくのもよい方法と思われます。周囲環境を汚染する危険があるケースとして、喀痰が多量、咳が頻回、吸引が頻回、下痢が頻回といった症例にチェックが入った場合は原則個室とするといった基準を設けるも良いと考えます。

Q2 同室者は、皮疹があるが検査では陰性なので、他の部屋の患者とバイタルセットは一緒でいいですか?

A2バイタルセットなどの管理については、的確な診断・治療が開始されていることを前提とした感染対策であり、疥癬における最優先の感染予防策は正確な皮膚科医師による診断と治療となります。
通常疥癬の場合には、血圧計などの管理は通常の方法で行いますが、角化型疥癬の場合は、接触感染対策を実施しますので、血圧計や体温計などの医療器具(バイタルセット)は別に用意されたほうが良いと思われます。患者への衣類やリネン交換など密接して接触する際には、袖付ガウンや手袋の装着も必要かと思われます。また車椅子やストレッチャーなども患者専用とすることを考慮します。どうしても他の患者と車椅子やストレッチャーを共有する場合は、ディスポシーツを使用するか、ピレスロイド系殺虫剤を噴霧して、丁寧に清拭した後に使用します。
また、外用剤を塗る際も、患者ごとの処方薬を確保し、手袋着用での塗布を行い、手袋は患者毎に破棄・交換し、外用剤の共用は避けてください。

Q3 ベッドマットレスはどのような対策を行っていますか?

A3 ヒゼンダニはヒトの体から離れると長くは生存できないと推定されていることから、角化型疥癬ではピレスロイド系殺虫剤を噴霧後、2週間は使用しない対策も有用と思われます。
ベッドマットレスに布製のカバーがある場合には洗濯(当院は院内で熱水洗濯)します。角化型の疥癬では念のため、ビニール袋に入れてピレスロイド系殺虫剤を散布して、密封して洗濯場へ搬送します。
また、ヒゼンダニは熱や乾燥に弱いことから50℃10分の加熱処理といった方法もありますが、ベッドマットレスのような大きなものを加熱処理するには困難ですので、真空式掃除機で表面を丁寧に清掃、ピレスロイド系殺虫剤を噴霧後に掃除機清掃を行うといった方法も行っています。

参考

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